誰があなたを殺したの

千秋楽まで耐えきって

継ぎ接ぎの友人 a.k.a. 同じ星に棲む君

これは僕の友人の話
僕が友人と呼ぶのはこの生き物だけじゃないかな
僕は大切な友達は友達と呼ぶから
友達にはなれなかったけれど
きっとあの頃、僕を一番理解していたのは君だったよ

短大生の頃サークルで出会ったメンヘラ
それがこの生き物
自らをテセウスの船だと認識していた、人ではない。
僕はスワンプマンだったので(今もそうだが)、人間じゃない生き物は楽だった
僕らは僕らを火星人という同士だと言い合っていた
地球はひどく息が苦しいねと笑っていた
もしどちらかが先に限界が来たら伝えようねと言っていた
先に限界が来たのは私だった。
死ぬと決めた4日ほど前にごめん、死ぬわと伝えた。

これから死ぬことを誰かに伝えるのは甘えだと思う
止めてほしいのだとそう考えている
私もそう思っているし考えている
でも、ひとつ言い訳をするならば
私は止められないと本気で信じていたのだ
死にたいを理解できる者は他人の死を止めない、と
今思えば傲慢だ
きっと当時の友人には私だけが唯一の理解者だったと思う、私にとってそうだったように
世界でひとりきりになる気持ちにされたに違いないのだ
どんな4日間を過ごしたのだろう
ただでさえ酒を飲み、足を切って、それでないと寝られないような日常だったのに
そんな友人は真夏でもタイツを履いていた
自殺を止められた次の日、大学で会った友人は素足だった
足は傷だらけだった
そんな友人を裏切ったと糾弾するのはひどく寂しいことだと今は思える
実際に直接責めたりはしなかった
それでも当時はお互いに裏切られた、裏切ったと考えていた
友人は自分の立ち位置を理解していた
自分の言葉では私を止められないことを
だから私のカミサマに連絡を取った
どうか止めてくださいと
行動は私が止めるから、心を止めてくださいと
カミサマはそれが自分にできるならと了承してくれたらしい
面識のない人間にそんなラインするのはすごいと思った
そんなラインが来てすぐに信じるのもすごいと思った
今でも思っている

そうして当日友人はついに大学に伝えたのだ
最近休んでる私が自殺を企てていることを
すぐに親に伝わり前科があるので親は会社を早退し
家に帰ってきた
私は呑気にご飯を食べてから家を出ようとインスタントラーメンを作ろうとしていた
袋を開けた段階で父親が怒鳴りながら帰ってきた
学校をサボってることを怒られていると思っていたので
しばらくアンジャッシュした
察しの悪い僕があ、友人が大学に伝えたんだなと気づいた頃に
お母さんが泣きながらよかった…と言って帰ってきた
なんで泣いているんだろうと思った
私は絶対に私が生きててよかっただとは思わない。
そう考えれば楽になれるとしても認めない。
あの日、弟がなんで泣いてたかは知らないけど、と言っていたお母さんを信じてるからだ
私が死のうとして、もしくは生きてたとして、それに泣く人がいて
その人がなんで泣いてるかは私は一生分からない。

閑話休題。ともかく私から伝えられた友人の行動で大学に親にカミサマに私の自殺計画は伝わり、未遂に終わった。
私は今生きている
過去に戻りたいとは思わないような人生を歩めている
そのとき死ななかったお陰で出会えた人たちがいる
でも私はまだ友人にお礼が言えない。
物理的にも心情的にも
もう恨んでも怒ってもいないけれど
まだお礼を言えるところまではきていないのだ
生きててよかったと思うことは多々あるのに
その分死ねばよかったと思ったことも多々あった
イーブンなのかもしれないし偏っているのかもしれない
お礼は言えない。

願わくばいつかあの日の友人にありがとうと言える日が来ますように。